ストマックの1日に密着した番組のような妄文
※ストマックのことを知っている人には鉄板だろう!
ストマックの朝は早い
「現場に行く前に権利とラインをハッキリさせとかないと鉄板できないだろう!」
そう言いながら複数の新聞の調教欄を丹念に読み込む。
「最近は権利関係も複雑だからね、複数の強力な権利が発生している。それを完全に見抜くのがストマックだろう!」
午後3時、競馬のために現場から離れるストマック。
「私は競馬を理由に早退できるから、その代わり毎週社員に焼肉を食べさせる、これがストマックだろう!」
そう言って彼は大井競馬場に向かった。
「みなさん、3レース、1枠1番、鉄板だよ!」
ストマックは車の中でも鉄板を怠らない。
競馬場に着くなり早足でコースに向かうストマック、どうやら返し馬を確認しているらしい。
「的場が入念に返し馬をやってるよ、これはもう鉄板だろう!」
そう言って彼は調教が完璧な的場の馬の複勝を買った。結果は2着。
「私は1600mまで測定しているからな、最後突き抜けただろう!」
「複勝は2着だと意味がないんだよ、1着じゃないといけないんだよ…」
そうブツブツ呟きながら複勝馬券を払い戻しに向かうストマック。彼の今日お目当てのレースは5レースの単勝1.5倍の馬だ、調教も完璧で他の馬とのタイム差も1秒以上ある。
それまで時間が空くため好調教馬を鉄板する。
「4レースの真島の馬は大外取ってきてるからな、鉄板だろう!返し馬見てあげるよ」
返し馬が入念に行われているのを確認し複勝馬券を購入するストマック。
「買ったよ!」
しかし結果は0.3秒差の5着。
「あれだけ大外ぶん回したら届かないだろう!」
大外だからだ。
そして勝負の5レースがやってきた。
朝複数の新聞の調教欄をチェックし完璧に調子が整っていることを確認した馬だ。単勝1.6倍の馬券を10万円分購入するストマック。
「私が単勝を買うときは7馬身以上突き抜けるんだよ!鉄板だろう!」
そしてついにファンファーレがなる。
ストマックの額に緊張の汗が流れる。あれだけTwitterで大言を放ってしまった以上ここは負けられない。大井の帝王ストマックの意地を見せつけなければならない。しかし競馬に絶対はない。
(出遅れだけはやめてくれよ…ハナ差で良いから勝ってくれ…)
そう言いたげな面持ちのストマック。
ストマックが単勝馬券を買うときは先行馬しか買わない。それは人気馬の単勝を確実に取るのに必須の条件だ。ストマックが買った馬は外枠先行、他には弱い逃げ馬が一頭いるだけだ。楽に外番手につけられるはず。調教も完璧だ、大出遅れさえなければ勝てる。後はスタートを…
「スタートしました!」
「7馬身差以上つけて勝っただろう!権利とラインを理解しないと南関は取れないんだよ!これが大井の帝王ストマックだろう!私が鉄板と言ったら必ず追ってくるんだよ!」
そう、ストマックの鉄板馬が勝ったのだ、それも4馬身差をつけて。
「マック!マック!マック!マック!」
Twitterのリプ欄にはマックコールの嵐。それも1分以内。これにはストマックもご満悦の様子。
「中野の馬がカモだったね。船橋の騎手には追う権利がないんだよ。」
次に人気していた中野の馬は調教欄で調子落ちを確認していた馬。
「まー、大井で勝ちたければ私についてくることだね。君たちでは勝てないよ、南関権利理論を理解していないと大井では勝てないんだよ。」
その後も連戦連勝。今日も20万もの大金を稼いだストマック。回収率は150%。
「権利とラインで全て取れるんだよ、これが力だよ!」
そう言いながら明日の競馬新聞を購入して帰るストマック。各紙の調教欄を丹念に確認し、それを権利とラインで味付けし、返し馬で最終確認をする。これを積み重ねてきた日々が今のストマックを形作っているのだ。
「特別に明日のレースを切ってあげよう!」
勝った日は得意げなストマック。
お風呂に入っていても鉄板してくれるストマック。強者は常に孤独であり、ストマックももちろんその1人。帰っても1人、咳をしても1人、そんなストマックの孤独を癒すのがTwitterである。ビールを開け、ヘネシーを開け、鉄板し、そして短い眠りにつく。
明日もストマックの朝は早い。
〜fin〜